~本講演の魅力~

バイヤー・キュレーターとして活躍するメソッド代表 山田 遊氏と、中川政七商店との関わりは深く、山田氏は同社の旗艦店(渋谷店)のバイイングでも、その目利き力を発揮してきた。
高倉 泰氏は中川政七商店で、産地支援事業のディレクター・バイヤーとして活躍中。ラジオ番組「工芸うんちく旅」のナビゲーターを務め、工芸の魅力を精力的に発信している。
伝統工芸の魅力、価値、そして時代の変遷で消えかねない危機を知っている二人が、「現状を守る」ではなく「アップデートする」視点で、その未来を考える

「伝統工芸メーカーも小売業も、今は大きな局面。

コロナ前には戻らないからこそ、いま改めて、未来を考える必要がある」

約10年の付き合いになる山田氏と高倉氏。「師弟関係」と冗談を交えつつも、伝統工芸に対する想いは二人とも真剣。

インタビュアー:
お二人の関係性をお聞かせください。

メソッド 山田氏:
かれこれ10年の付き合いになります。僕は昔から中川政七商店さんと付き合いがあって、協業などしていました。泰(高倉氏)が入社したのが2014年だから、彼とはそれ以来の仲です。一緒に仕事で台湾出張にも行きました。僕ら二人の対談は今回が初めてです。受講者の皆様にもリラックスしていただきたいので、普段の空気感を出せたらいいなと思います。

中川政七商店 高倉氏:
僕はもともと店舗デザイン・設計の仕事を経て現職に就きました。遊さん(山田氏)と出会ってからは、その視点や切り口にいつも刺激をいただいていて、弟子のようなものです。(笑)
対談を通じて、改めて遊さんと当社がやってきたことを振り返り、これから伝統工芸をどう守っていくか、そして変えていくかを、受講者の皆様と共に考える場になればと考えています。


「回転の速い世の中で、工芸は消えてしまう危機と隣り合わせ。

だからこそ『継続』が何より大切。盛り上がれば、地域全体が活気を帯びる」

インタビュアー:
伝統工芸の産業に携わって、やり甲斐を感じるのはどのようなときでしょうか?

メソッド 山田氏:
伝統工芸のビジネスは、社会貢献性を数値化しづらい部分があります。それでも、長年続いてきた産業は、確実にその地域の地理・風土・文化に紐づいており、とても大切なものです。僕は、伝統工芸は「継続すること」が肝要だと考えています。回転が速い今の世の中で、伝統工芸の価値は見失われがち。そして、消えてしまうと二度と戻らない。それは社会の損失だと思います。
僕が伝統工芸をバイイングして、何かしらビジネスの軌道に乗せた経験はあるので、そういう意味では「継続」に少しでも貢献できているのかな、と考えています。

「伝統工芸を継続させることに貢献できたときは、やり甲斐を感じますね」と山田氏

中川政七商店 高倉氏:
まずはシンプルに、工芸の面白さが、知らなかった人に届いたときですね。もう一つは、作り手の方が経済的に自立したとき。実際に、工芸メーカーの方と一緒に商品のプロモーションをするのですが、商品が売れ、メーカーが大きくなると、その会社は地域での主要な存在となります。僕らはそうした企業を「一番星」と呼んでいます。「一番星」の社員の方が、仕事へのやり甲斐を深めたり、あるいは若い人が集まってきたりすると、町全体が活気を帯びるんです。そうした好循環の誕生に立ち会ったとき、この仕事をしていて良かったなと実感します。

 

「一緒に仕事をする工芸メーカーが大きくなり、その地域が盛り上がると、この仕事の喜びを感じる」と高倉氏

インタビュアー:
今回の講演を、どのような方に聴いてほしいでしょうか?

メソッド 山田氏:
バイヤーの方々はもちろんですが、「ライフスタイルWeek」には伝統工芸に携わる出展社様も多いと伺いました。そのどちらにも聴いていただけると嬉しいですね。というのも今、小売業もメーカーも、岐路に立たされていると思うんです。マスク着用を例にとっても、コロナとの付き合い方が変わりました。海外との人流も変わるでしょう。もうコロナ前には戻らないわけですし、僕たちは今、大きな局面にいるんじゃないかと思います。
2030年に向けて、伝統工芸も、小売業も、きっと大きく変わるはず。いまこのタイミングで改めて考えることが、業界の持続可能な発展に繋がるのではないか、と考えています。

中川政七商店 高倉氏:
地域のものづくりに少しでも関心がある方に、受講していただきたいですね。伝統工芸は、その背景にある物語は守りつつも、新しい切り口や発信が必要だと考えています。ともすると古い考えに縛られてしまう業界だからこそ、新しい気付きを得る場として活用していただけたら嬉しいです。

インタビュアー:
ありがとうございました!

「受講者の皆様と、伝統工芸の未来を一緒に考えたい」と意気込みを語るお二人

~山田氏 略歴~

東京都出身。
南青山のIDÉE SHOPのバイヤーを経て、2007年、method(メソッド)を立ち上げ、フリーランスのバイヤーとして活動を始める。現在、株式会社メソッド代表取締役。
各種コンペティションの審査員や、教育機関や産地での講演など、多岐に渡り活動を続ける。
これまでの主な仕事に、国立新美術館ミュージアムショップ「スーベニアフロムトーキョー」、「21_21 DESIGN SIGHT SHOP」、「燕三条 工場の祭典」などがある。

~高倉氏 略歴~

中川政七商店による産地支援事業「合同展示会 大日本市」のディレクター・バイヤー。
大学卒業後、店舗デザイン・設計の会社を経て、中川政七商店に入社。
「日本の"いいもの"と"いい伝え手"を繋ぐ!」をミッションに、日本各地のつくり手と共に展示会やイベントを開催し、商品の仕入れ・販売・プロモーションに携わる。
中川政七商店ラヂオ「工芸うんちく旅」配信中。

山田氏、高倉氏の講演

「いま、伝統工芸の未来を考える ~カリスマバイヤー山田 遊×中川政七商店の視点~」

2023年4月7日(金)12時30分~13時30分(東京ビッグサイト西展示棟4階)

◆展示会概要◆
第6回 ライフスタイルWeek春
【会期】2023年4月5日(水)~7日(金)
【会場】東京ビッグサイト
【主催】RX Japan株式会社